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中小企業の特徴

中小企業M&Aでは、財務・会計・税務の知識を持っているだけでは不十分。
本項目では、対象となる「中小企業」の特徴について、特に押さえておきたいポイントを、
経営者、管理体制、決算書の観点から解説します。

 

(1) 絶対的な権限をもつオーナー経営者
① 所有と経営の一致
 中小企業は、株式に譲渡制限を付している会社がほとんどであり、経営者とその近親者といった限られた株主によって会社が保有され、経営に口を出す株主はほとんど存在しません。すなわち、多くの中小企業では所有と経営が実質的に一致していることになります。それゆえ、中小企業のオーナー経営者の権限は絶大であり、その影響力は会社の隅々にまで及びます。
 中小企業においては、経営者自らが取引先との交渉に臨み、ほとんどすべての取引書類をチェックすることも珍しいことではありません。人事に関しても同様で、給料やボーナスはオーナー経営者が独断で決定し、昇進、異動などもオーナー経営者次第という会社もよく見受けられます。
 このようにオーナー経営者が絶対的な権限を有している場合、実質的に取締役会は機能しておらず、意思決定に関し、大企業にみられがちな根回し等はもちろん存在しません。会社の経営はオーナー経営者のトップダウンで行われるため、意思決定はきわめて迅速であり、スピード感のある経営が可能となります。

② オーナー経営者の強い想い、こだわり
 会社経営の厳しさは、いつの時代も変わりません。どんな経営者でも長いビジネス人生のなかで一度や二度は、会社が危機的な状況に陥ったという経験をもっています。オーナー経営者は、ビジネスの厳しさを痛感しながら、時には法律すれすれの行動をとったり、取引先と激しい口論をしたりするなど、会社を存続させるために体を張ってエネルギッシュに行動しています。それゆえ、オーナー経営者には強い生命力が漲っており、事業に対しても人一倍強い自負心を持っています。
 そのようなオーナー経営者は必ずしも経済合理性に従った行動ばかりをとっているとは限りません。時として独善的で、直感的に意思決定していることも多いようです。例えば、創業当時の苦しい頃に助けてもらった取引先に対しては、その時の恩を一生忘れることはなく、損得勘定抜きで取引をしたり、同郷や同窓の人に特別な計らいをしたりすることはよくあることです。
 また、オーナー経営者は孤独で、社内に相談できる相手がいないといわれることがあります。それゆえ、顧問税理士などの外部者から多大なる影響を受けることも少なくありません。

③ オーナー経営者(一族)の私的経費
 中小企業では、会社と個人の区別が曖昧で、オーナー経営者個人の私的な経費が会社の経費として処理されていることが少なくありません。たとえば、家族で住んでいる住居を社宅にする、業務で使うという名目で自家用車を購入し、会社の経費にしてしまうといったことは、多くの中小企業で実際に行われています。さらに、個人的な飲食費や家族との旅行代などを会社に負担させる例さえ見受けられます。
 絶対的な権限を持つオーナー経営者からの指示であれば、これを拒否できる社員はほとんどいないでしょうし、顧問税理士でさえもこれを明確に拒絶することはなかなかできないようです。

 

(2) 人材不足と脆弱な管理体制
①人材不足の慢性化
 中小企業は大企業と比べると、給与をはじめとした待遇面でどうしても見劣りがします。毎月の給与だけでなく、賞与や退職金などについても、大企業は制度として確立しているのに対して、中小企業では制度自体がなかったり、あったとしても極めて少額である企業がほとんどです。就業時間も中小企業の方が長くなりがちで、完全週休2日制でない会社も珍しくありません。福利厚生の面でも、その差は歴然としています。
 このような状況では、中小企業に優秀な人材はなかなか集まってきません。仮に潜在的に優れた人材を採用できたとしても、研修などの教育にコストをかけることができないため、社員の成長は個人任せになってしまいます。
 中小企業の人材不足は、営業、技術、管理(特に財務・経理)といったあらゆる分野で継続的に発生しており、中小企業の発展の足枷になっているのが現実と言えるでしょう。

② 脆弱な管理体制と顧問税理士制度
 中小企業は企業規模も小さく、経営資源にあまり余裕がないため、一般的に利益に直接関連する業務以外は重視されず、後回しになりがちです。そのため、営業や製造(技術)に人員とコストの大部分が割かれ、管理部門(総務、人事、経理など)は必要最低限の人数にとどめられる傾向がみられます。
 また、中小企業の場合、財務や経理は親族以外に任せたくないというオーナー経営者も多く、社長の奥さんや娘さんが経理を行っていたりします。彼女たちは経理に関する基礎知識を持ち合わせていないことも多く、そのような場合、現金管理や振込以外の業務(記帳や申告業務など)は顧問税理士に全て任せてしまっているようです。
 経理業務を顧問税理士に丸投げしてしまうと、たしかに一定レベルの決算書や税務申告書が作成されますが、一方で会社内部には経営の意思決定のための重要情報が蓄積されなくなり、適時に経営判断や管理を行うことができなくなってしまうという弊害が生じることになります。
 
③ 不十分なガバナンス(企業統治)
 中小企業では、一般的に、所有と経営が一致しているためコーポレートガバナンスという発想が基本的にありません。人員の少ない中小企業においては会社全体に経営者の目が行き届くため、多くの経営者はコストをかけてまでガバナンスの仕組みを導入する意味はほとんどないと思っています。実際に、現金や預金の入出金については親族にしか取扱いを許さず、従業員には決算書などの財務情報をいっさい開示しないという中小企業も少なくありません。
 また、取締役会は形骸化していることが多く、監査役といっても親族や顧問税理士に名前を借りているだけで、監査的な機能はほとんどありません。もちろん、外部の公認会計士に財務諸表監査を依頼することはきわめて特殊な状況(上場準備など)以外にはなく、ガバナンスはほとんど機能していません。

 

(3) 税務思考の決算書
 わが国の中小企業においては、いわゆる税務会計(課税所得と税引前利益がほぼ一致する方法)に基づいて決算書を作成している会社が多く見受けられます。税務会計に基づく決算書は、財務会計に基づいて作成される決算書とは異なり、決算書作成段階から税法で認められる方法で決算書を作成するものです。多くの場合、この基準で作成された決算書は、会社の財政状態および経営成績を適正に表しているものではありません。
 これは、わが国においては戦後より顧問税理士制度が発達し、多くの税理士が財務会計によって実態を表した決算書をつくるよりも、税務署に対し適切に税務申告を行うことを重視してきたために定着した悪しき慣習です。
過去においては財務会計と税務会計にあまり大きな違いはなかったため、さほど大きな問題は生じませんでした。しかしながら、経済環境の変化と度重なる法律(税法や商法=会社法など)の改正等により財務会計と税務会計の間に次第に大きな差異が生じるようになると、これまでどおり税務会計に基づいて作成された決算書は財務の実態と大きく乖離するようになり、今ではさまざまな問題を発生させる原因となっています。

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